成功した経営者の象徴ともいえる高級時計、ロレックス。「どうせなら法人の経費で買ってお得に手に入れたい!」と考えたことはありませんか?
しかし、その考えには「待った」をかけなければなりません。税務の点から見ると、ロレックスを経費で買うのは、非常にハードルが高いのが現実です。
この記事では、なぜロレックスの経費計上が難しいのか、そして、どのような場合なら経費として認められる可能性があるのかを徹底解説します。無理な経費計上のリスクを理解し、賢明な経営判断を下すための一助となれば幸いです。
結論:ロレックスを経費で買うのは原則NG
まず結論からお伝えします。ロレックスのような高級腕時計は、原則として法人の経費にすることはできません。
「通勤や営業で車を使うから、高級車は経費にできると聞いたことがあるのに…」と思われるかもしれませんね。しかし、時計と車では、税務署の見方が大きく異なるのです。
なぜ経費計上が難しいのか?
経費として認められるためには、「事業の売上を上げるために直接必要である」という大原則があります。ロレックスがこの原則を満たしていると証明するのは、極めて困難です。
- 業務との直接的な関連性の証明が困難:「良い時計をしていれば商談がうまくいく」というのは、残念ながら客観的な証明にはなりません。
- 個人的な嗜好品と見なされる:時計は個人の趣味やファッションの要素が強く、事業に必要な備品とは考えにくいのが一般的です。
- プライベートでの使用が前提と判断されやすい:業務時間だけ身につけ、退社後は金庫にしまう、という状況は考えにくく、プライベートでの使用が主だと判断されます。
税務調査で真っ先に指摘される項目
もし無理にロレックスを経費として計上した場合、税務調査で指摘される可能性が非常に高くなります。
税務調査官は、会社の資産や経費の内容を厳しくチェックします。その中で「ロレックス」のような高額な嗜好品が見つかれば、格好のターゲットになってしまうでしょう。
例外的にロレックスを経費にできるケースとは?
原則はNGですが、どのようなビジネスにも例外は存在します。では、どのようなケースであれば、ロレックスの購入費用を経費として認められる可能性があるのでしょうか。
事業内容に直接関連する場合
ご自身のビジネスが、ロレックスと直接的に関わっている場合です。これは最も分かりやすい例でしょう。
例えば、高級腕時計の販売や修理を事業としている法人が、販売用の商品としてロレックスを仕入れた場合、その購入費用は「仕入原価(売上原価)」として経費計上できます。
広告宣伝目的で使用する場合
会社の売上を上げるための広告塔として、ロレックスを使用する場合も経費計上の可能性があります。
例えば、芸能人や人気YouTuber、インフルエンサーなどが、自身のキャラクターやコンテンツの演出としてロレックスを着用し、それが直接的に収益に結びついていることを証明できるのであれば、「広告宣伝費」として認められる余地があります。
ただし、一般の経営者がこれに該当することはほとんどなく、証明のハードルも非常に高いと言えます。
【投資目的なら?】ロレックスの正しい会計処理
「個人的には使わない。将来の値上がりを期待して、会社の資産として投資目的で買う場合はどうなるの?」という疑問も湧いてきますよね。この場合の会計処理は少し複雑です。
投資目的で購入した場合の勘定科目
投資目的、つまり将来売却して利益を得るためにロレックスを購入した場合、考えられる勘定科目は主に「棚卸資産」または「器具備品(固定資産)」です。
- 棚卸資産として処理:販売目的で保有する「商品」と同じ扱いです。不動産業者が販売用の土地や建物を「棚卸資産」とするのと同じ考え方で、時計を売却したタイミングで「売上原価」として費用になります。
- 器具備品(固定資産)として処理:絵画や骨董品のように、資産として計上する方法です。ただし、後述するように減価償却はできません。
税理士によっても見解が分かれる部分ですが、転売による利益獲得が明確な目的であれば「棚卸資産」として処理するのが一般的と考えられます。
価値が減らないので減価償却はできない
通常、車やパソコンなどの固定資産は、時の経過とともに価値が減少していくため、その価値の減少分を「減価償却費」として数年にわたって経費に計上します。
しかし、ロレックスや美術品のように、時の経過によって価値が減少しない、むしろ価値が上がる可能性のある資産は、減価償却が認められていません。
ロレックスを買う前に経営者が考えるべきこと
ここまで読んで、「なんだか面倒だな…」と感じた方も多いのではないでしょうか。ロレックスを経費で買うことを検討する前に、一度立ち止まって考えてほしいことがあります。
無理な経費化より健全な節税策を
税務リスクを冒してまでロレックスを経費にするよりも、もっと健全で効果的な節税策はたくさんあります。
- 従業員の福利厚生の充実(社員旅行、食事補助など)
- 業績アップに繋がる設備投資
- 倒産防止共済(経営セーフティ共済)への加入
これらは税務署にも説明しやすく、会社の成長にもつながる前向きな投資です。
金融機関からの評価も意識しよう
決算書に高額な時計や車が資産として計上されていると、金融機関からの見方も変わってくる可能性があります。
「この経営者は、事業に直接関係のないものにお金を使うタイプかもしれない」と判断され、融資審査の際にマイナスの影響を与える恐れがあります。将来的に融資を考えている場合は、特に注意が必要です。
よくある質問(Q&A)
いいえ、価格や新品・中古は関係ありません。問われるのはあくまで「事業に直接必要かどうか」という点です。たとえ10万円の中古ロレックスでも、業務との関連性を説明できなければ経費として認められません。
美術品として資産計上し、減価償却しない、という処理は可能です。ただし、この場合、誰も身につけることなく、完全に「飾り物」としておく必要があります。また、高額な美術品の購入は税務調査の対象になりやすい点も忘れてはいけません。
自己判断は絶対にせず、必ず顧問税理士などの専門家に相談してください。会社の事業内容や状況によって、最適な判断は異なります。グレーゾーンに踏み込む前に、プロの意見を仰ぐことが、結果的に会社をリスクから守ることにつながります。
まとめ:ロレックスは個人で買うのが最も賢明な選択
最後に、この記事の要点をまとめます。
- ロレックスを経費で買うのは、業務との関連性証明が難しく原則NG。
- 例外は、腕時計販売業の「仕入れ」や、芸能人の「広告宣伝」など極めて限定的。
- 投資目的で購入した場合、売却するまで経費にはならず、節税効果はすぐにはない。
- 無理な経費計上は、税務調査のリスクや金融機関の評価ダウンにつながる。
結論として、ロレックスなどの高級腕時計は、無理に経費にしようとせず、役員報酬の中から個人として購入するのが最も安全で賢明な選択と言えるでしょう。
税務のリスクに怯えることなく、ご自身の頑張りの証として、堂々とロレックスを身につける。それが、経営者として最もスマートな姿ではないでしょうか。
あなたの会社ではどのような節税対策をしていますか?もしよろしければ、コメントであなたの経験も教えてください。
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